廃車に助けられた話

20年以上の前の話です。実家には柿の木が二本植わっていて秋になるとわさわさと実をつけます。年々枝も成長していて隣にある駐車場に葉が届きそうなぐらい伸びていました。

ある日すごい剣幕で若い男の人が家に怒鳴り込んできました。

「お宅の柿の木の枝でうちの車に傷がついた、早く弁償しろ」と。

丁度その時両親も不在で小さい私はその男性に促されるまま駐車場に赴きました。彼の車をみると深いえぐられた様な傷がありました。私はどの程度で車が傷つくのかもしらなかったので、その男性にひたすら謝りました。「ごめんなさい、父が帰ってきたら話してみます」と。

男はここで待ってるから早く親を出せと更に煽ってきたように思いだされます。本当に怖かったので、今でも思い出す程です。

その1時間後、父が帰ってきて事の成り行きを説明しました。すると父は知り合いに電話をかけると言って、話し終わるやいなや出かけて行きました。

実家の裏には小さな廃車工場がありました。父はそこに電話していたのです。父は太めの柿の木の枝を片手に知り合いが営むこの工場に件の男性と共に向かいました。

知り合いの方はここにある車は廃車で解体する所だから枝で傷つくかどうか試してみるといいと仰ったのです。働く男性はそれだけでも格好良いのに凄まじく輝いて見えました。

結果、傷一つつかないのでその男性の言いがかりだったのだとその廃車のおかげで判明したのです。

今やこの工場の跡地には新しい会社が建っていてみる影もないのですが廃車を見る度このエピソードを思い出します。